2009年12月11日金曜日

「貧困大国アメリカ」

「貧困大国アメリカ」                            2009年12月2日           

著者:堤未果

<ルポ内容>
○ 9.11以降のアメリカ資本主義の迷走をルポした内容である。
○ 現代アメリカの資本主義=グローバリズム=世界標準の経済原則=経済効率化の追求→民営化
国民の安全な暮らし・機会均等の教育・医療制度の保障などの国家が国民に対し責任を持つことが絶対条件である国家としての原則を経済効率化の追求から民間にスライドさせたことにより、結果的に民主主義を破壊することになっている。
○ 国民が一部の富裕層と多くの貧困層に2極化している。貧困ビジネスの発生
・肥満児童
・自然災害は人災
・高額な医療負担 一度病気になると貧困層に転落する。
・学生は生存権保持のために軍隊に入隊する。
・軍隊の民営化問題
○ 現代の日本は、アメリカの追随方向にあり、アメリカと同様な危機に瀕し始めている。

<作者の言う対応策>
○ 消費至上ライフスタイルからの脱却 ⇔ 市場原理主義への抵抗
○ 健全なメディアの育成

<感想>
○ グローバリズムへの対抗 ⇔ ローカル思想
○ ローカル思想=自然への回帰
○ 人間は生物の1種類=自然界の一部

◇ 日本の皆保険制度の素晴らしさ
◇ 郵政民営化の是非は。

by E.K

ことばの食卓

「ことばの食卓」                              2009年11月18日
著者:武田百合子

夫の武田泰淳の小説は読んだことがあるが、夫人のものは初めてである。

食べ物(枇杷、牛乳、キャラメル、お弁当)とそれにまつわる思い出を、丹念に描いている。次いで季節に伴う思い出に登場する食べ物を書いている。一世代上の作者の描写が、自分の子どもの頃の思い出としてよみがえる。
「シベリヤ」と言う名のお菓子、すっかり忘れていた名前だが、その形と味がはっきりと思い出された。上野の桜はつい最近まであったような風景と思ったが、それでも30年以上も前の記憶になる。仕事中に上野で花見の場所取りができる、古きよき時代の話である。

思い出は、景色と食べ物で構成されている。お盆帰りの田舎までの道中、列車の窓から買った駅弁、お茶、なぜか凍ったミカン。神社の縁日で買って、吸ったはっかなど。紙芝居を見ながら食べた、せんべいなど、今でも眼に浮かぶ。

しかしどうも自分には感性がないらしい。細かな描写から来る景色に、ある種の感慨を覚えることはあるが、それでと問う自分がいる。本を読むことで、何かを判りたい、自分が気がつかないことを、感じるようになりたいという、願望には応えてもらえない。
読むことに意味を見出す必要は無い、感じればいいのだろう。しかし、何か物足りないと思う自分を意識した読書であった。

久しぶりに見る言葉、卓袱台(ちゃぶだい)、三和土(たたき)、新高ドロップ、蝙蝠傘(こうもりがさ)
by toraneco

2009年10月11日日曜日

ローマから日本が見える

「ローマから日本が見える」
著者:塩野七生

<ローマ帝国>
BC753 ローマ建国 ロムルス
     王政時代 7代  244年間 (王-元老院-市民集会)
BC509 共和政 ブルータス
     共和政  486年間 (執政官-元老院-市民集会)
     ・   ケルト族ローマ占拠、ローマ連合(コローニア)、ローマ街道網 BC312
     ・ リキニウス法成立 BC367(貴族・平民に機会の平等)
     ・ ポエニ戦役(カルタゴ滅亡 BC146)
     ・ カエサル、ルビコンを渡る(BC49)
BC23 アウグストゥス 皇帝誕生
帝政時代  パクス・ロマーナ
476   西ローマ帝国滅亡 
1453  東ローマ帝国滅亡

<ローマと日本の類似性>
・ ポエニ戦役後のローマの混迷、戦後の急成長後の日本の低迷
→ 経済成長に国家システムがついていけなかった。

<ローマから学ぶ>
ローマは危機を乗り越え、大帝国に成長した。→ 無数の敗北や失敗を乗り越えたから
・ 敗者である他民族をローマ市民として受け入れ
・ 時代に合った政治体制の選択(改革とは過去の否定ではない→再構築)
・ 勝者ゆえの混迷の打開シナリオ、けっして挫けない
・ 普遍帝国(民族の違い、文化の違い、宗教の違いを認めて包み込む)
・ 任せることからすべては始まる。(七人の侍の百姓は最後に勝つ=役目が済めばお払い箱、
  ダメなら暗殺、今なら落選)

<感想>
・ 千年の繁栄は、平穏に続いたのではなく、改革の歴史により獲得したのだと解った。
・ どんな制度も、当初は意味のある仕組みだったのだが、周りの環境、時代により変化させないでいると、動脈硬化、滅亡に至る。(戦後体制からの脱却の意味)
・ 戦に明け暮れた戦国時代から徳川幕府、明治までの歴史を学び、ローマを参考にすることが、今の時代を見直すカギとなる。
・ 潔くあきらめないで、粘着力ある改革を続ける精神力が求められる。(日本人には欠けていると思われる)
・ 日本の独自性に逃げ込み、違いを排斥することなく、ローマ市民のように包み込む努力が必要である。(鎖国できる時代ではない、移民をどう扱うかが問われる)
・ 日本の安全保障、繁栄を、周辺国との間でどのように担保するのかを考える時に、歴史(ローマ及び日本)に学ぶことも重要である。→今現在、日本は平和だから、考えないようにしがちであるが。

byとらねこ

**************
○ 塩野七生は、史実に基づいた古代地中海を中心とした歴史作家であるが、この作家が最も輝くのは、随筆・エッセイである。
  歴史を知っていることがそうさせるのかは不明であるが、物事への洞察力・観察力がすばらしい。特に男女の機微、世評批判、ユーモア等の表現は現在の日本人の中でピカ一ではないかと思う。
○ この本は、長編「ローマ人の物語」の政治面のダイジェスト版となっている。表題にあるようにローマ時代の歴史経緯から見て現代日本を検証おり、非常に示唆に富む内容となっている。
○ この本は、2005年に書かれているが、日本のバブル期以降の混迷している現状を分析し、政治面での「改革」の必要性を説き、指導者の出現を期待していることを述べているが、それが現在、民主党による政権交代で現実味を帯びていることは、まさに預言者としての先見の明があったと言えるのではないか。
○ 「改革」は、“結局は力で突破するしかない”また、“まずは思う存分仕事をさせてみて、ダメならばクビにしてしまう。それくらいの気構えで政治家に仕事をさせてみたほうがいい”といっており、これは民主党の政権奪取、新政権発足からの動きにまさに符合しており、驚きとともに感銘すら覚える。
○ 日本はローマ時代と同様、多神教であり、多文化への理解があり、再構築・再編成をくじけずに何度も取組むことができること、また、「組織のローマ」のように集団組織力は日本人の気質としての得意分野ではないか。
○ ローマ時代に繁栄を継続できた要因が現在の日本に残っており、実行に移すシステムを早急に取り組むべきであるということがこの作者の言いたいことではないか。
<一方で次のことがローマとの違いであると思われ、今後に日本で克服可能かどうか。>
● 日本は歴史的に単一民族社会を継続させてきたが、ローマにおける最大の特質制度であった他民族にたいする寛容(属州地にローマ市民権を与えること。ローマ連合などの「敗者の同化」)を今後日本で遂行することが日本人気質として可能かどうか疑問に思えること。
● いわゆる天才に物事をゆだねる柔軟性や危険性をどこまで許容できるか。

by E.K

2009年3月3日火曜日

達者でポックリ

『達者でポックリ。』帯津良一(東洋経済新報社 2008年10月刊)
大木壯次
<特徴>
著者は1961年に東大医学部を卒業し、東大付属病院や都立駒込病院などで、食道がんの専門医として手術に明け暮れていたが、やがて西洋医学の限界に気づき、ホリスティック医学に取り組む。ホリスティックの究極の目標が「生と死の統合」であり、その統合の接点となるものの理想が「達者でポックリ」であることを、実践面も含めて平易に述べている。
<概要>
第Ⅰ部 ポックリ編
第1章 「達者でポックリ」は最高の死に方
達者でポックリいくためには日ごろから自分の死のタイミングを見極める精神   
性を持ち、養生することが必要。
第2章 「死後の世界」を生きる
死の不安はこの世に自分の居場所がなくなることから起こる。だから、死を迎えても、自分の居場所がなくならないことを確信すれば、不安はかなり軽減されるはず。死後の世界を信じ、さらに死後の世界に希望を持てば、死ぬことが不安ではなくなるどころか、楽しみにさえなってくる。
第3章 「生命場」を高める
私たちのからだには「空間」がたくさんある。この空間を「場」ととらえる。
生命の本質はこのような場の中にこそあるのではないか。その場が「生命場」であり、健康の源はすべて「生命場」にある。中国医学の治療は「生命場」がもともと持っている「力」を後押しして助けるものだ。
第Ⅱ部 お達者編~死ぬまで元気で楽しく生きる~
第4章  「達者でポックリ」のための養生法
食の養生・気の養生・心の養生
第5章  「生命場」を高める代替療法
帯津三敬病院で行っている主なものは心理相関療法、気功、食事・栄養療法、
漢方薬、ホメオパシー、鍼灸、サプリメント
第6章  「達者でポックリ」をさまたげる健康常識
第7章   ホリスティックな生き方のすすめ
ホリスティックとは人間を丸ごと診る医学。「生老病死」のみならず、死後の世界もホリスティックの対象。生と死の統合の接点の理想が「達者でポックリ」。[帯津式「達者でポックリ」のための十二か条]