2017年12月6日水曜日

「猫と庄造と二人のをんな 」 谷崎潤一郎

2017/12/6
By Takako.Y

・この物語は、少し賢い一匹の西洋種の猫をめぐって愚かな人間たちが繰り広げる喜劇と
いえるだろう。

・解説で磯田光一が指摘しているように、題名の配列頓序が示すのは、猫がおんなよりも
重要な位置にあるということ。 しかも猫は漢字、おんなはひらがな。庄造にとっては女の方が猫よりも軽いということだろう。

・思惑があって猫をもらうということになるが、晶子はそんなことよりも自分の将来をも
っとよく考えて、ぐうたらで情けない元夫にさっさと見切りをつけて別の男を探した方が
いいに決まっている。
・しかし、そうしないことによってこの物語が始まる。冒頭部の品子から福子への手紙は
とてもおもしろく、つい物語にひきこまれてしまう。

・庄造の猫の愛し方は異常だ。ことに二杯酢の小鯵を猫に与えるところの描写はすばらし
く、その光景を彷彿とさせる。また猫に対する人間たちの心の勤きもよく描かれている。
・福子のわがままで奔放な性格では結婚生活が長続きしないと品子が考えるのも無理はな
い。福子はあきれるほど愚かな女として描かれている。
・福子の財産が目当てで嫁にした母親も愚かだ。この母にしてこの息子ありか。

・登場する人間たちは愚かなところが多く、むしろ猫の方がしたたかに生きているのは滑
稽だ。