2009年10月11日日曜日

ローマから日本が見える

「ローマから日本が見える」
著者:塩野七生

<ローマ帝国>
BC753 ローマ建国 ロムルス
     王政時代 7代  244年間 (王-元老院-市民集会)
BC509 共和政 ブルータス
     共和政  486年間 (執政官-元老院-市民集会)
     ・   ケルト族ローマ占拠、ローマ連合(コローニア)、ローマ街道網 BC312
     ・ リキニウス法成立 BC367(貴族・平民に機会の平等)
     ・ ポエニ戦役(カルタゴ滅亡 BC146)
     ・ カエサル、ルビコンを渡る(BC49)
BC23 アウグストゥス 皇帝誕生
帝政時代  パクス・ロマーナ
476   西ローマ帝国滅亡 
1453  東ローマ帝国滅亡

<ローマと日本の類似性>
・ ポエニ戦役後のローマの混迷、戦後の急成長後の日本の低迷
→ 経済成長に国家システムがついていけなかった。

<ローマから学ぶ>
ローマは危機を乗り越え、大帝国に成長した。→ 無数の敗北や失敗を乗り越えたから
・ 敗者である他民族をローマ市民として受け入れ
・ 時代に合った政治体制の選択(改革とは過去の否定ではない→再構築)
・ 勝者ゆえの混迷の打開シナリオ、けっして挫けない
・ 普遍帝国(民族の違い、文化の違い、宗教の違いを認めて包み込む)
・ 任せることからすべては始まる。(七人の侍の百姓は最後に勝つ=役目が済めばお払い箱、
  ダメなら暗殺、今なら落選)

<感想>
・ 千年の繁栄は、平穏に続いたのではなく、改革の歴史により獲得したのだと解った。
・ どんな制度も、当初は意味のある仕組みだったのだが、周りの環境、時代により変化させないでいると、動脈硬化、滅亡に至る。(戦後体制からの脱却の意味)
・ 戦に明け暮れた戦国時代から徳川幕府、明治までの歴史を学び、ローマを参考にすることが、今の時代を見直すカギとなる。
・ 潔くあきらめないで、粘着力ある改革を続ける精神力が求められる。(日本人には欠けていると思われる)
・ 日本の独自性に逃げ込み、違いを排斥することなく、ローマ市民のように包み込む努力が必要である。(鎖国できる時代ではない、移民をどう扱うかが問われる)
・ 日本の安全保障、繁栄を、周辺国との間でどのように担保するのかを考える時に、歴史(ローマ及び日本)に学ぶことも重要である。→今現在、日本は平和だから、考えないようにしがちであるが。

byとらねこ

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○ 塩野七生は、史実に基づいた古代地中海を中心とした歴史作家であるが、この作家が最も輝くのは、随筆・エッセイである。
  歴史を知っていることがそうさせるのかは不明であるが、物事への洞察力・観察力がすばらしい。特に男女の機微、世評批判、ユーモア等の表現は現在の日本人の中でピカ一ではないかと思う。
○ この本は、長編「ローマ人の物語」の政治面のダイジェスト版となっている。表題にあるようにローマ時代の歴史経緯から見て現代日本を検証おり、非常に示唆に富む内容となっている。
○ この本は、2005年に書かれているが、日本のバブル期以降の混迷している現状を分析し、政治面での「改革」の必要性を説き、指導者の出現を期待していることを述べているが、それが現在、民主党による政権交代で現実味を帯びていることは、まさに預言者としての先見の明があったと言えるのではないか。
○ 「改革」は、“結局は力で突破するしかない”また、“まずは思う存分仕事をさせてみて、ダメならばクビにしてしまう。それくらいの気構えで政治家に仕事をさせてみたほうがいい”といっており、これは民主党の政権奪取、新政権発足からの動きにまさに符合しており、驚きとともに感銘すら覚える。
○ 日本はローマ時代と同様、多神教であり、多文化への理解があり、再構築・再編成をくじけずに何度も取組むことができること、また、「組織のローマ」のように集団組織力は日本人の気質としての得意分野ではないか。
○ ローマ時代に繁栄を継続できた要因が現在の日本に残っており、実行に移すシステムを早急に取り組むべきであるということがこの作者の言いたいことではないか。
<一方で次のことがローマとの違いであると思われ、今後に日本で克服可能かどうか。>
● 日本は歴史的に単一民族社会を継続させてきたが、ローマにおける最大の特質制度であった他民族にたいする寛容(属州地にローマ市民権を与えること。ローマ連合などの「敗者の同化」)を今後日本で遂行することが日本人気質として可能かどうか疑問に思えること。
● いわゆる天才に物事をゆだねる柔軟性や危険性をどこまで許容できるか。

by E.K