2019年8月21日水曜日

「コンビニ人間」  村田紗耶香

令和1年8月21日(水)
by Eiji.K

◇ 最近の芥川賞はあまり面白くなく、短編小説はつまらない印象があるが、この小説は不思議な世界を描いており、一気に読むことができ、本の面白さを感じた。

◇ コンビニ店員は全ての行動がマニュアル化されているが、それに従って行動することは一種の快感を得ることになるのだろうか。テレビゲームにはまると一日中やり通す若い人がいるが、没頭する楽しさと奥深さはあるのだろうと思う。

◇ この小説の魅力は従来の世間常識を超越した異次元の世界を垣間見せているのではと思わせるところがあり、読後感としてこういうコンビニ店員の世界、新しい感性があるのだということを知らされたということではないか。例として、食事することは栄養バランス、旬の素材摂取、いかに美味しく食べるかなどを考慮することが今までの常識であるが、小説では食事は単に生命維持の餌としかとらえていない。

◇ 一方で、芸術家の世界では異次元に立つことはむしろ歓迎されることであるが、コンビニという無機質な管理された世界にこのような店員が現れたことがこの小説のミソなのではないか。

◇ 白羽さんのいう「縄文時代」の社会の掟は、現代に引き継がれ「世間常識」として生きながらえているが、現代の社会基盤は少子高齢化、自然環境変化等で大きく変容してくると、それに合わせて「世間常識」も変わらざるを得なくなっている。そうした時代の流れを小説を通して感じさせられるのが良いところだ。

◇ 日本で100万部を突破し、世界でも翻訳され売れているということは、この小説で提起している時代の流れが世界でも共通項となっていることを示している。

以上

0 件のコメント: