◇ この作者の「動的平衡」の本を22年に読んでいる。当時の感想文として、
・表題の「動的平衡」とは60兆個の細胞で構成されている人間はその細胞自体は常
に高速で生まれ・死滅することを継続しており、動いている中での淀みであること
を表している言葉である。
・身体は、分子的に見ると、数か月前とは全く別物になっている。
・生命とは、動的な平衡状態にあるシステムである。一輪車に乗っているのと同じ
である。
◇ 今回の本の内容は、作者が米国の研究機関で分子生物学の実際の研究実態
と、先人たちの歴史が書かれているが、文章表現が上手く、学術的な記述内
容を平易の言葉で読ませてくれる。
◇ ポスドク研究者の実態が出てくるが、作者は、アカデミアの塔は実際は暗
く隠微なたこつぼ以外のなにものでもなく、死んだ鳥症候群といっている。
身近に同種の友人がおり、特に理科系の大学院卒業者の就職難は現在でも深
刻な状況にあるらしい。更に、研究の専門性は世界が相手となるため、英語
はもとより数ヶ国語を習得しなければならない苛酷さは、凡人では立ち入る
ことができない領域であることを当時、感じた。
◇ ”われわれの体の大きさと原子の大きさから、なぜ、われわれの体はそん
なに大きくならなければならないのか”の疑問についての回答が出されてい
る。原子の活動の誤差率が10%あるとすると高度な秩序が要求される生命活
動では致命的になる。そのため、実際の生命活動では個々の原子活動の何億
倍かの原子活動となるため誤差率を急激に低下させることができると書かれ
ており、生命活動の巧みさを知ることができた。
◇ 最後に出てくるGP2ノックアウトマウスの話は、取り組み経過がドキュメ
ントであり、生命の滑らかな復元力等の神秘さが書かれているが、このよう
な最先端の研究内容を素人が知れる機会を提供できる作者の表現能力は希有
な貴重なものである。それは、我々にとって知らない世界を垣間見ることが
できる読書の楽しみでもある。
by T.I
生物と無生物の定義について議論が交わされるのかと思って読むと、初めは肩透かしにあったような気がしたが、2回読んでみて少しだけ理解できた。
Q.生命とは何か? A.自己複製を行うシステムである
DNAの二重ラセン=ポジとネガ が存在することが、傷ついた細胞を修復するシステムを支えていて、生命維持機能を果たしていると知った。
命が「動的な平衡状態」にあるとの説明は、新たな認識で時の流れの中に自分がいるとの感覚を持った。
研究のステップのち密さがすごい、その中で研究成果を誰よりも早く発表しないと、その努力は報われないという厳しい世界で、そのストレスに耐えるものだけが成果を得るのだと分かった。山中教授が過去の研究のうえに自分の実績があると謙虚に話していたことや、STAP細胞問題が起こるのが少し理解できた。
ウィルスは代謝を行っていない、鉱物に似た物質、→ しかし、自らを増やすことができる(自己複製の力を持つ)→ ウィルスは生物と無生物のあいだをたゆたう何者かである。
核酸=DNA 4つの要素(ACGT)からなる=遺伝子の本体(遺伝子情報を担う物質)
シャルガフのパズル:AとT、CとGの含有量は等しい →DNAは単なる文字列ではなく、必ず対構造をとって存在している(相補性) → 傷つく細胞の補修を担保し、平衡状態を維持している
同業者レビューの不公正?(世間が狭い、透かし見)
→ 透かし見したノーベル賞受賞者への怒りと、若くして亡くなった研究者への同情、、敬意があふれている。
→原発の安全性審査の問題と同じ、狭い分野の同業者しか論文の価値が理解できない。
原子はなぜそんなに小さいのか?(1オングストローム=100億分の1m)
→生命は秩序を構築、大きいから
平均からはずれるふるまいをする粒子の頻度は、平方根の法則による
√100=10 √1,000,000=1,000
10/100=10% 1,000/1,000,000=0.1% 影響度が違う
エントロピー増大の法則
生命は「現に存在する秩序がその秩序自身を維持していく能力と秩序ある現象を新たに生み出す能力を持っている」
食べることがエントロピー(乱雑さを表す尺度)増大に抗する力を生みだす
シェーンハイマーの重窒素を使った実験
体は流れそのものである。分解と合成が繰り返され、入れ替わっている。
生命とは代謝の持続的変化であり、この変化こそが生命の真の姿である。
秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない。
生命とは動的平衡にある流れである
内部の内部は外部である→ 生命のリスク管理として存在
ライバルチームとの競争のし烈さ
ES細胞 → ノックアウトマウスの実験 → 不都合は起こらなかった → 生命=動的な平衡がもつ、やわらかな適応力となめらかな復元力の大きさに感嘆
この本のわかりにくさは、生物の定義が進化してきた経緯と研究者の運不運、研究の大変さが混在していることだが、自らが研究者として思っていることを書かなくてはいられなかったのだと感じた。
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