2012年3月7日水曜日

「海にはワニがいる」  ファビオ・ジェーダ


                                2012年3月7日
by Eiji.K

1.世界には“難民”と呼ばれる人々が何百万人いるといわれているが、その実態については、特に、難民を経験したことがない日本人には理解の外の出来事であるが、この本を読むと難民の実情・現状について少しの理解ができると思う。
2.このような経験をしなくて済む日本の安定した基本的人権(人間らしい生活・教育・仕事ができること。)が守られている社会に感謝しなければならないのだろう。
3.敗戦後の混乱期は、これと似た状況があったと思われるが、そうはいっても同一民族の国では、その期間は数年間であったはずであり、アフガニスタンのような国ではその混乱が数十年続いていることそのものが理解の範囲を超えていることになる。
4.エヌヤット少年が生き延びることができたのは、彼の誠実さ、探究心、向上心、優しさ等彼の素質によるところが結果的に他の人の援助・手助けを招くことになり、また、生き伸びられる原因なのだと思う。
5.やはり、アフガニスタンのような国にならないようにするために事前に諸問題・課題を国民として解決していくことの積み重ねがその民族の知恵であり、もっとも留意すべきことなのだろう。
6.我が国は長い歴史があり、民族としての尽力・努力の結果があることがこのような国にならなかったのではないか。
7.エヌヤット少年を理解でき、感動することと、難民を我が国で受け入れるべきかは、別の次元の話である。ギリシャでのオリンピック開催に伴う建設作業に難民が多数かかわった話があったが、不法難民が産業の一角を占めるようなことは、難民の社会保障や教育・年金・雇用問題等社会に対する影響は大きい。日本は、島国で難民が来にくい点や同一民族の歴史が長い点もあり、日本の方針であるODA等による人道支援などにより、そもそもの世界の中で難民発生を起こさせない進め方をとることが望ましいと思う。
8.逃避行の過酷さ(26日間の冬山越え(77人中12人の死亡)、トレーラーの二重底に閉じ込められた3日間、ゴムボートでの海峡渡航)等の難行を実施することは日本人には到底不可能であり、そのような境遇にない現状を感謝すべきなのだろう。
9.その他
・アフガニスタンにいるタリバンは多国籍の集団であることが書かれており、必ずしもアフガニスタン人の集団ではないことが分かる。
・他国における警官の他民族に対する暴力・収奪の実態はよく報道されているが、エヌヤット少年がイランを出る理由はよくわかる。(2度の強制送還)

以上