2011年11月9日水曜日

「精神病院を捨てたイタリア、捨てない日本」

著者 大熊一夫
by Eiji.K

◇ 日本の精神病院にかかる現状
・日本の精神病棟は35万床(1993年)で9割が私立であり、地域保健サービスは一部地域を除いては貧弱である。
・日本の精神保健は病院経営の都合が第一、患者の身の上は二の次だ。
・精神病院は基本的な人間性が失われるところである。

◇ 日本の目指すべき方向
・精神病患者の奇矯な態度は、狂気の中から出てきたものではなく、周りの環境から生まれたものである。
・患者の病気にスポットを当てるのではなく、患者の危機的な状況を招い  た社会的・経済的な問題、人間関係の解決が必要なのだ。
・地域保健サービスは精神病院と比べ経費的に安くなる。
・患者を管理するという考え方を捨てることが必要であり、患者を隔離し、薬漬けにすることではなにも改善されない。
・日本の国の課題は、精神病病院のベッド数を10年で半分にし、各市町村は精神病患者がそれぞれの市町村の中で暮らせるような社会資源を作ることである。

◇ 感想
・日本での精神病対応の実態についての知識がなく、何が課題となっているのか把握していないので、作者の指摘している事項についての理解が十分ではないが、作者の主張していることは、正しいのだろうとは思う。
・イタリアを中心としたルポルタージュの本であるが、内容が専門的でありすぎる。また、構成・編集方法が煩雑であり読みものとしてわかりにくい印象である。
・イタリアの精神病院をなくす歴史的経緯は、政治課題そのものであり、イタリアの政情に左右されてきたことがよくわかる。